「うわっ……なにこれ……」
数年前、実家の押し入れから学生時代に買った「M1400(ベージュ)」を発掘したときのことです。
「うわー懐かしい!久しぶりに履くか」と箱を開け、足を通そうとした瞬間。
ザラッ……ボロッ……
ソールがまるで「古くなったカステラ」のように崩れ落ち、床が粉だらけになりました。あの時の絶望感と言ったら……。これが、スニーカー界で最も恐れられる現象、「加水分解(かすいぶんかい)」です。
「高いニューバランスほど、加水分解しやすい」
実はこれ、半分正解です。
せっかく買った3万円の相棒を、ただのゴミにしないために。
今回は、マニアである私が実践している「加水分解との戦い方」と、「なぜ履くことが最強のケアになるのか」の理由を徹底解説します。
敵を知る:なぜ、高い靴ほどボロボロになるのか?
「安い靴は平気なのに、なんで高い靴だけ腐るんだ!」と怒りたくなりますよね。
これには明確な理由があります。犯人は「ポリウレタン(PU)」という素材です。
そもそも「加水分解」とは?
このポリウレタン、クッション性(モチモチ感)は抜群に良いのですが、「水分」と反応して分解してしまうという致命的な弱点があります。
日本の高温多湿な空気中の水分を吸って、徐々に内側から自壊していくのです。
| 危険度 | モデルの特徴 | 代表例 | 理由 |
| 高(注意) | USA/UK製 ENCAP搭載モデル | M1300, M1500, M996 | 最高の履き心地を出すためにポリウレタンを多用しているから。 |
| 低(安全) | アジア製 C-CAP/EVA搭載モデル | CM996, ML574 | 加水分解しにくいEVA素材(スポンジに近い素材)を使っているから。 |
皮肉なことに、「履き心地を追求した高いモデルほど、寿命という爆弾を抱えている」のです。
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「3万円のNB」と「1万円のNB」は何が違う?USA/UK製とアジア製の決定的な差を、マニアが本音で語る
↑なぜ高いモデルはポリウレタンを使うのか?その「感動の履き心地」についてはこちらで語っています。
寿命を延ばすための「3つの鉄則」
加水分解を「完全に」防ぐことは、現代の科学では不可能です。
しかし、ケア次第で寿命を「5年」から「10年以上」に延ばすことはできます。
鉄則①:【最強】とにかく「履く」こと
「もったいないから」と箱にしまっておくのが一番の原因と考えています。
🤔 なぜ履くと長持ちするの?
直感的には「使わないほうが綺麗に残る」と思いがちですよね。でも、「空き家」をイメージしてみてください。人が住んで毎日窓を開けている家は長持ちしますが、閉め切った空き家は湿気がこもって、すぐに床や畳が腐りますよね?
スニーカーも全く同じです。
歩いて体重をかけるたびに、ソールがギュッと圧縮されます。これがポンプのような役割を果たし、中の「湿った空気」を外に押し出し、外の「乾いた空気」を取り込みます。
つまり、「歩くこと=ソールの換気扇を回すこと」なのです。
週に1回、コンビニに行くだけでもいい。あなたの体重で、相棒の深呼吸を手伝ってあげてください。
鉄則②:保管は「シューキーパー + 乾燥剤」
しばらく履かない時期があるなら、湿気対策は必須です。ここで「何を一緒に箱に入れるか」で数年後の運命が変わります。
- 汚れを落とす: 泥や埃は水分を吸い寄せます。
- 木製シューキーパーを入れる:型崩れ防止だけでなく、「レッドシダー(杉)」などの木製キーパーは、靴内部の湿気を強力に吸い取ってくれます。新聞紙より圧倒的に効果が高いです。
- 乾燥剤と密閉:さらにジップロック等の袋に「シリカゲル(乾燥剤)」と一緒に入れて密閉すれば完璧です。
鉄則③:雨の日は履かない(または最強の防水をする)
当然ですが、雨は大敵です。水濡れは加水分解を加速させます。
どうしても雨の日に履きたい、あるいはゲリラ豪雨が心配な場合は、「安物の防水スプレー」でもいいのですが…
おすすめなのは、スニーカーマニアの間で「これ以外は使わない」と言われるほど信頼されている『Crep Protect(クレッププロテクト)』。これを使って水分を完璧に弾いてください。数千円の投資で、3万円の靴が守れるなら安いものです。
もし、ボロボロになってしまったら?
「もう手遅れだ……ソールが割れてしまった」
そんな場合も、まだ捨てないでください。2つの選択肢があります。
1. 公式リペアサービスに出す
M1300やM996などのUSA/UK製なら、約1万円〜で純正ソールに張り替え可能です。アッパーの革が足に馴染んでいるなら、直して履き続けるのが一番のロマンです。
2. 「加水分解しないモデル」に買い替える
「もう管理に気を使うのは疲れた……」
そう思うなら、次は「アジア製(CM996やML574)」を選んでみてください。これらはポリウレタンの使用が少なく、加水分解のリスクが圧倒的に低いです。
「気を使わずにガシガシ履ける」というのも、スニーカーの立派な性能の一つですから。
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まとめ:手間がかかるからこそ、愛着が湧く
「加水分解」は怖いですが、あまり神経質になりすぎるのもよくありません。
- 「空き家」にしないよう、定期的に履いてあげる。
- 「木製キーパー」や「防水スプレー」で湿気から守る。
まるでペットや植物のように、手をかければかけるほど、ニューバランスは長持ちしてくれます。
正しい知識とケア用品で、あなたの相棒と10年以上の付き合いを目指してください。

